知財の価値は
生協をぶらぶらしてたら偶然見つけた本。
知財(特に特許)関係の本を読みこんでいるわけではないので、あまり業界地図についてはっきりしたことを言うわけにはいかないのだけれども、筆者の認識はわかりやすい。
つまり、日本企業は一社内に知的財産を囲い込み、研究開発から販売まで完結させようとする。
一方、世界的な潮流は、他社と水平分業で協力し合う「オープンイノベーション」である。
このオープンイノベーションという用語ははっきりと定義されているわけではないが、「特許を自社で囲い込むのではなく、他社と協力して新しい技術を生み出していこう」ぐらいの意味だと思う。
そして、特許を集めて投資の対象としてしまうインテレクチュアルベンチャーズ(IV)という会社がアメリカではすでに現れている。
IV社のビジネスモデルに対しては、新手の「パテント・トロール」だ、などの批判があるものの、上記の筆者の認識を前提とするならば、日本の企業は、ゲームのルールが変わりつつあるのだと認識し、そのうえで合理的な行動を探るべきではないかというのが私の意見。
日本企業の傾向が、ただ保守的なのか、日本の環境ではそうするのが合理的だからそうしているのかはわからない。
前者だとすれば、世界に取り残されても自業自得だけれども、後者だとしたら、「国際ルール」と「ローカルルール」で齟齬があるということなので、どこに問題があるのか突き止めなければならない。
いずれにしてもこのままなら日本のメーカーが「ガラパゴス化」すると考えられ、筆者も
IVのようなインベンションキャピタル(発明資本)が米国と中国の間を縦横無尽に暴れ回り、これぞという発明が両国に集中して生み出される。米中という二大知財大国にはさまれた日本は、この分野でも“ジャパンパッシング(日本素通り)”の悲哀を味わいながら、世界に誇るモノづくりの強ささえ徐々に失われていく。(258ページ)
と悲観的な観測をしている。
就職活動の話につなげるのならば、知財戦略を見ておいた方がいいということになろう。
特にメーカー志望の人は。
日本企業の保有している特許は平均して3分の1が死蔵状態だそうだが、中には時代遅れになってしまったものもあるだろうから、この点のみを以て非難することはできないけれども、死蔵著作権の活用についてはもっと考えてもいいのではないか。
例えばファミコンのゲーム音楽なんかを動画制作で使いたい人は結構多いはず。
死蔵ゲーム音楽を集めて月額100円でもとればそれなりの収益はあがるんじゃないか。
それでも運用コストとリスクを問題視するかもしれないが、そうなるともうどうしようもないよなあとも思う次第である。
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 【書評】『ファクトフルネス』(2020.05.09)
- 【書評】『母さん、ごめん。』(2019.04.21)
- 【書評】『スッキリ中国論』(2018.12.31)
- 【書評】『誰もが嘘をついている』(2018.11.08)
- 【書評】『世界一シンプルで科学的に証明された究極の食事』(2018.10.14)
この記事へのコメントは終了しました。
コメント