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ネット帝国主義と日本の敗北―搾取されるカネと文化 (幻冬舎新書)
ネット帝国主義と日本の敗北―搾取されるカネと文化 (幻冬舎新書) 著者:岸 博幸 | |
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久々に書いたエントリがオフ会の告知というのもなんなので、書評らしきものをつらつらと書いてみる。
生協の購買に売って無かったのでわざわざアマゾンから買った本。
コンテンツ・レイヤー、プラットフォーム・レイヤー、インフラ・レイヤーのネットのレイヤー構造や、プラットフォーム・レイヤーを握った企業が強い力を持つことなど、既存の議論(例えば佐々木俊尚『2011年 新聞・テレビ消滅』(文春新書)など)をベースに構成されている。
が、この本で特徴的なのは、そのプラットフォーム・レイヤーを握った企業が強大な力を持つことや、プラットフォーム・レイヤーを握っている企業の多くがアメリカ企業(例えばグーグル)であることを、問題視している点である。
具体的には、ジャーナリズムと文化の衰退が危惧されるという。
「国益」という観点が一貫していて、わかりやすい。
筆者もいうように、グーグルをはじめとするアメリカ系ネット企業が行っていることは「収益最大化を目指す企業の行動としては非常に正しい」(198ページ)。
ただ、市場が大きすぎて、独占状態が生じたときにその影響力が他の市場に比べて大きすぎるのが問題なんだろうと思う。
だから、「レイヤー間での競争が公平・公正に行われるような市場環境」(196ページ)を整備せよ、という提言は、字面以上に深い。
日本版フェアユース規定や、グーグルブックも、表現の自由などの観点からは称賛されることが多いものの、「国益」という観点からは結構慎重になるべきことが分かる。
1つ面白いと思ったのは、一見すると畑が違う小田切博『キャラクターとは何か』(ちくま新書)との共通点があったこと。
岸さんは、アメリカ企業だけでなく日本の企業にもきっちりと批判を加えており、コンテンツビジネスの企業に対しては、大胆に、すばやくビジネスモデルの進化に取り組むべきで、ビジネス戦略が重要だと述べている(205ページ)。
この認識は小田切さんも同じで、「キャラクタービジネスは「ビジネス」なのであり、まず商品を売るために最大限の努力をすべきものだ」(185ページ)と述べる。
マンガとかアニメに限らず、文化的なものが、原産地から離れたところで根付くかどうかは、現地の文化的背景とどう結合するかに依るので、ただ日本のマンガ・アニメだからという理由で受けるわけではない。
例えばもともとは南米の原住民の文化だったタバコがヨーロッパに、世界に伝播したのは、医薬としての側面が大きかった(まさかこんなところで、開放科目で学んだ知識が生きるとは思わなんだ)。
だから、マーケティング的な視点が重要になるのだと、こういうことである。
ゲームは別として、日本のマンガ・アニメは、日本人が考えるほどには海外で受容されていないようなので、まだまだこれからの市場なんだろうなという無難なことを書いて、着地点を見失ったまま終わる。
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