ジャケ買いは失敗する
情報病――なぜ若者は欲望を喪失したのか? (角川oneテーマ21)
情報病――なぜ若者は欲望を喪失したのか? (角川oneテーマ21) 著者:三浦 展,原田 曜平 | |
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久々に踏んだ地雷。
この本は、三浦展氏と原田曜平氏に、早稲田大生「草男」と立教大生「鉄子」が加わった対談なのだが、なにがひどいってあまりに議論が感覚的なのである。
新書だからそもそも仮説だというのが前提なのかもしれないが、そういうのは雑誌の対談で十分。
そういう雑誌レベルの議論を250ページにわたって展開されると流石につらい。
以下、本書と僕との感覚との相違を3つ。
感覚の相違1.バンドはリア充って呼ばない
これは何の冗談か。
俺に言わせたらバンドなんかリア充の極みだよ。
感覚の相違2.みんなと同じものは一通り持とうとする
みんながiPod持ってるから俺もiPod欲しいとかいう例が出てるが、そんな小学生みたいな大学生見たこと無いぞ俺は。
感覚の相違3.思想は宗教みたいでオカルト
え、もしかして『思想地図』とか『ロスジェネ』とかシノドスとか赤木論文とかあのへんも全部オカルト呼ばわりする気ですか。
とこのように感覚的な議論に対して感覚的な反証をぶつけてみたのだが、当然どちらの感覚が「正しい」かなんてのを議論しても意味無いし答えも出ないのであって、僕が言いたいことは次の一言に尽きる。
統計を出せ、話はそれからだ。
三浦氏のまとめによると、現代の若者はコミュニケーションの維持管理にお金やエネルギーが割かれていて、だから交際費をつぎ込む半面、大型消費はあまりしない。
空気を読みあっている。
だから持ち物やら趣味やらも他人に合わせている。
差別が好まれない、と。
いやいやいや。
そんなことないだろう。
みんなどこか倒錯したものを持ってると思うぞ。
趣味が泥団子作りとか、絵馬鑑賞とか。
こういう若者論=世代論は統計をとってさえはっきりしたことはわからないのに、統計を取らずに感覚だけで議論するなんてのは非常に危険。
一般的な感覚と統計がずれることはよくある話で、菅原琢『世論の曲解』に詳しい。
もちろん統計がすべて正しいわけではないが、全く無視していいものでもない。
これを読んだおっさん連中が「だから最近の若者は~」とか言い出すとしたらこの本の罪は重い。
この本から読みとれる若者像と僕とは全く異なるので、この感覚的な議論を前提にすれば僕はアウトサイダーということになる。
別にアウトサイダーは気楽でいいのだけれども、他人に貼られて嬉しいレッテルでもない。
一種の分断統治。
この本の筆者は統計を取って改めて完全版を書いてほしい。
というか書くべき。
最後にどうしても突っ込まずにいられないのだが、草男君はバイトで月に10万稼ぎ、うち5万が交際費に消えるそう。
通信費と交通費は親が払う。
突っ込みどころ満載だと思うがとりあえず「一般的な若者」ではないよなあきっと。
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