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2011年1月 3日 (月)

【書評】街場の中国論


中国に行こうというのだから何か中国に関する本を読んでおいた方がいいだろう、ということで読んでみたのがこれ。
専門的な本ではないですが、それがかえって良かったのか、多分専門的な中国書を読んだら得られなかったであろう総論的な視座が得られたんじゃなかろうかと思っております。

全体を通して考えてみると、今の中国社会を考察する上で重要な視座が1.中華思想、2.毛沢東の功罪の2つです。

1.中華思想は、世界の中心は自分たちだという独善的な考え方だと思っていましたが、そうではなく、支配者が持つ王権が、中央からグラデーションのように周囲に広がっており、王権が及ぶ範囲の民を「王化」するのだという考え方のようです。
したがって、王権が及ばない「化外の地」があることを観念的に認めており、「化外の地」の人々に対しては統治権を持っていなくても、まあ精神的な上下関係を忘れなければそれでいいよということなのだそうです。
歴史的にも、冊封体制下で属国に朝貢させたものよりも、お土産として持たせたものの方が遥かに豪華だったそうな。

で、この中華思想は、国と国の間に国境を引くという発想とは相性が悪い。
というのは、国境を認めるということは、王権の及ばないところと及ぶ範囲をはっきりと断絶させるから。
グラデーションのように王化の光が広がり、境目はよくわからないがとにかくどこかで届かない範囲が出てくる、という発想とは相いれない。
だから、台湾や尖閣諸島の問題も、中国政府は建前上、中国の領土だというが、実際は国境線を曖昧にしておきたいだけなのではないかというのが内田先生の考え方のようです。

なかなか説得的ではありますが、今の政府も正当派の中華思想で動いているかわからないし、ましてや民衆のレベルになるとまた別の論理で動いているに違いないだろうという点で疑問を持ちました。

2.毛沢東の功罪とは、功=抗日戦の勝利、罪=大躍進政策と文化大革命の失敗のことです。
中国は1840年のアヘン戦争以来、敗戦に敗戦をかさね、列強諸国に良いように領土を奪われ、ずっと勝利体験がなかったところに第2次世界大戦の勝利、ということで、日本人が想像する以上にそのインパクトは大きいようです。
大躍進政策では産めよ増やせよの考え方で大量に人を増やしたその結果が現在の環境問題なんかにもつながっているし、文化大革命では多くの知識人が迫害されたそうですが、それを差し引いても中国人の印象では功の方が大きいのではないかとのことでした。

もっとも、これまた一般人民のレベルではどのような毛沢東の印象を持っているかわからないですがね。

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