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2012年12月27日 (木)

【書評】 『ウェブで政治を動かす!』

『Twitter社会論』などの著作があり、ネットのトレンドに関しては定評のおける津田大介氏が書いた本とあって、発売前からアマゾンで予約して入手しました。
ちょうど先月帰国している間に発売されてよかったです。いやあ、本当にタイミングが良かった。

中身はといえば、「はじめに」で触れられているように、「政局」ではなく「政策」が大事だというスタンスで筆が進められます。
具体的には、政治家がどのようにして政策を有権者に訴えるか、あるいは有権者がどのようにして政治家を選ぶか、などであり、その過程で現行の公職選挙法がネックであることにも触れられています。
政治家や政治団体、公的機関のネット利用の実例に関しては非常によくまとまっています。
特にアメリカの大統領選挙に際してのネットの使われ方や、オープンガバメントの実例に関しては、日本語では得にくい情報までリーチしており、資料的な価値が高いです。
本書の執筆にかけたという3年の歳月は伊達じゃないですね。

しかしながら、気になるのは、筆者が政局を軽視しすぎているように思う点です。
よく考えてみると、政局と政策は境界があいまいです。
例えば、先の総選挙では第3極が話題となりました。
どの政党がどことくっついて第3極となるだとかいう話題は一見すると政局が話題になっているように思えます。
しかしながら、第3極が支持されるゆえんは「民主や自民とは違うから」などという政局的な理由のほかに、「卒原発」や「道州制の導入」といった、自民党や民主党とは違った革新的な政策を打ち出しているから、という理由もあるはずです。
この場面において、2つの理由の区別はかなりあいまいです。

また、今回の選挙では、第3極の連携がうまくいかなかったせいで、小選挙区で票を食い合い、結果として自民党を利することになったといえます。
第3極の政策を実現するためには、当の第3極が国会で過半数の議席を得ることが必要で、そのためには小選挙区で立候補者の調整する、といった一見政局的な操作が必要になります。
このように、政局と政策は不可分であり、簡単に無視して論を進めていいものではないように思います。
むしろ、政局がないがしろにされがちなところが現在の日本の政治の問題点の1つであり、この点をインターネットを使って解決するよう考察できないものか、と思いました。
「政局中心の政治はつまらない、政策重視で考えるべきだ」という理想論的な考え方ではなく、「政局と政策のバランスをどうとるか」という地に足を付けた考え方が重要ではないのでしょうか。
特に、選挙期間中のネット利用が解禁された後は、です。

ちょっと前に、One Voiceキャンペーンが話題になったときに思ったのですが、選挙期間中のネット利用解禁はそれ自体が目的になりがちで、インターネットが選挙運動に使えるようになればそれだけで世の中がよくなると錯覚してしまいます。
しかし、当然そんなわけはなくて、結局のところ政治的な諸々は最終的に国会で決めるしかないわけです。
選挙運動にインターネットが使える、なんてのはできて当たり前のことで、その先の議論(政治形態の在り方や、「熟議」の形など)の盛り上がりを期待したいのです。
本書では『Twitter社会論』で感じたような「これは社会が変わるかもしれないぞ」というような高揚感を感じませんでしたが、それはこのもう1歩及ばない感じがもどかしかったからなのかもしれません。


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