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2012年12月16日 (日)

【書評】『ネットの自由 vs. 著作権』

今回の選挙でも争点となったTPPであるが、工業や農業の分野だけではなく、知財の分野にも影響があるんだ、という本書。
TPPの交渉においては、アメリカが「著作権保護期間の延長」や「法廷賠償金の導入」などを要求してくる可能性があるそうだ。
確かに、あまり愉快な話ではない。
しかしながら、現時点で分かっていることは周辺状況からまとめたものであり、実際に交渉がどうなるかは不透明である。
また、工業や農業の分野に比べると、一般国民への影響がイメージしづらく、TPPに反対する材料としては使いにくい。
この点は筆者もジレンマを感じているようであった。

本書の面白い部分はむしろ、誰がルールを決めるのか、という観点から書かれた第4章である。
TPPのような国際条約で、ある一国が他国のルールを決めてしまうようなアプローチがある一方で、インターネットの世界ではグーグルのようにプラットフォームを握った一私企業の利用規約が事実上の世界的なルールとなってしまう。
そして、岸博幸氏も『ネット帝国主義と日本の敗北』で書いているように、インターネットの巨大プラットフォームはほとんどがアメリカに本拠を置いている。
したがって、日本人ネットユーザたる私たちは、該当企業の利用規約作成に関わることができないのはもちろんのこと、彼らを縛る法律の制定に関わることもできない。
この点がある面では恐ろしい。
したがって、モバゲーやらニコニコやら、国産プラットフォームに期待が集まるのは当然なのである。
LINEは・・・日本製なのか韓国製なのかようわからんけれども。

ビジネスの観点から言ったら、プラットフォームを支配することはうまみが大きいので、誰もが狙う。
そして、プラットフォームが大きくなればなるほどユーザにとっての利便性も増す。
本書ではプラットフォーム企業の「自主規制」の否定的な面を紹介しているが、良い面もある。
例えば数年前にニコニコ動画が、最近ではLivedoor blogがJASRACと楽曲や歌詞の利用契約を結んだように、ユーザ個人がやりにくいことをまとめてやってしまうことで、ユーザにとっての利便性を高められる点である。

消費者としての選択は、有権者としての一票よりも影響を与えやすい。
常に選択肢が複数用意されており、国が企業の動きを過度に規制しない、という条件下で国産プラットフォームの競争を促し、強化することが、これからの文化を発展させるための1つの方法なのかもしれない。

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