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2015年3月 7日 (土)

中国(大陸)のボードゲーム/テーブルゲームについて 2015

上海テーブルゲームの会になかなか問い合わせがありませんで、ヒマです。
いい機会なので、以前から一度まとめてみたいと思っていた中国(大陸)のボードゲーム/テーブルゲーム(以下、ひっくるめて「ボードゲーム」という)界の状況についてまとめてみたいと思います。

※参考
2015年の中国ボードゲーム事情を振り返る
http://raytiagu0802.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/2015-1573.html

2017年の中国ボードゲーム事情を振り返る
http://raytiagu0802.cocolog-nifty.com/blog/2017/12/2017-3e1d.html

○前文
中国語ではボードゲームのことを「桌游」と言います。
読んで字のごとく卓上の遊戯ということですが、大陸の中国人が「桌游」と聞いて具体的にどういうものを思い浮かべるかというと、
麻雀、象棋(いわゆる中国将棋)、トランプ(賭けるやつ)、三国殺、人狼、UNOあたりが挙がることが経験上多いです。
このうち、三国殺、人狼、UNOはパーティーゲームとして定番のようですが、それゆえにいわゆるドイツゲームを好む層には忌避されがちです。
前者をイメージして桌游のグループにやってきた方が「三国殺やらへんの?」と発言し場がおかしな空気になったことをすでに2回経験しています。
広大な中国の大地で毎週のようにこういう悲劇が繰り広げられているのかもしれません。

「中国 ボードゲーム」で検索してみると、この三国殺を取り上げた記事が複数ひっかかりますが、三国殺を以て中国のボードゲームの代表とすることは、人生ゲームを以て日本のボードゲームの代表とするのに等しく、木を見て森を見ずの状態になっているといえます。
本記事では中国ボードゲームという「森」のうち、ドイツゲームに関連がある部分をざっくりと概観してみたいと思います。
なお、私のボードゲーム経験は2年と決して長くはないので、事実認定や意見に色々と不適切な部分があると思いますが、そういった点はどしどしご指摘くださるとありがたいです。

○簡単な歴史
中国でボードゲームが一般に流通するようになったのは2007年からのようです。
上海方盒子貿易有限公司が方盒子365(Funbox 365)というブランドを立ち上げ、中文版ボードゲームの販売やボードゲームカフェ開業・オリジナルゲーム制作のサポート等の事業を始めます。
また、2008年には遊卡桌遊(Yoka Games)が三国殺を出版します。
このFunbox 365と三国殺が火付け役となり、この後、ボードゲームカフェが急速に増えることになります。
中国のボードゲームカフェには、マンションの一室で開業し、ゲームは海賊版で内装はお世辞にもきれいとは言えないというような場所が今でもたくさんありますが、この時期には場所さえあれば週末は人があふれるという状況だったそうなので、そういった経営努力は不要だったのでしょう。

現在はというと、Funbox 365は2014年に倒産し、今では傘下にあったボードゲームカフェのF&F 城市勇者主題桌遊概念館が名残を残すのみとなっています。
三国殺はマクドナルドやケンタッキーとタイアップしてキャンペーンを張ったり、シリーズの流れをくむTCGを出したりとその勢いは続いているように見えていますが、一時の神通力は衰えているようで、三国殺頼りだったと思われるボードゲームカフェは次々に店をたたんでいます。

しかしながら、決して中国のボードゲームが廃れているわけではないでしょう。
2012年にはフランスに拠点を置くボードゲーム出版社Asmodeeが中国法人を立ち上げ、2014年には実店舗を開設しています。
一刻館やMYBGといったボードゲーム出版社もオリジナルや中国語版のゲームの出版を継続しています。
また、2014年に、ボードゲームカフェのJoy Pie等を運営する上海創意樹伝播有限公司がクラウドファンディングで資金を集めて『錦鯉』を出版を成功させたことは明るい材料です。
総じて言えば、現在は一時のブームが収束して市場が成熟しつつあり、次なるブームを狙っているという状況ではないでしょうか。

○三国殺について
先ほどから名前を出している三国殺とは何か。
三国殺は三国志をテーマにしたゲームで、各プレイヤーが三国志のキャラクターとなり、各々の陣営の勝利条件を満たすことを目標にドンパチ殴り合うゲームです。
問題は一部で悪名高いように、ルールがそのまま『Bang!』のパクリであることです。
もっとも、各武将の特殊能力などは独自ですし、その後に様々な追加ルールが出てきているので、今となってはオリジナルといえなくもないかもしれません。
日本にもたんとくおーれとかありますし。
まあ郭嘉と周瑜の件は言い逃れできないと思いますが。

なお、この三国殺には海賊版も多く、キャラクターを変えてポケモンやワンピース、果ては日本のAV女優(!)にした「X殺」が掃いて捨てるほどあります。
そのくらい人気なのだとも言えます。

○海賊版について
中国のボードゲームと切っても切り離せない関係にある海賊版についても触れておこうと思います。
確かに中国には海賊版のゲームがたくさん出回っていますが、良識あるプレイヤーは手を出したりしません。
海賊版を買う人と買わない人の割合について、興味深い調査があったので紹介します。

http://tieba.baidu.com/p/3463753041?pn=1

これはかつてボードゲームの雑誌を発行しており、現在はウェブ媒体を中心に記事を発信しているDICEが昨年末に2週間かけ、計906通の回答を得たアンケート調査です。
この調査の第12問が「海賊版のボードゲームについてあなたはどのような態度ですか?」という設問であり、結果は次のようになっています。

A.輸入されておらず、容易に買えないゲームは海賊版を買う。 33.4%
B.正規版と海賊版の差額が50%以上であれば海賊版を買う。 13.5%
C.正規版しか買わない。 44.7%
D.心は正規版を支持するが、財布は海賊版を支持する。 8.4%

上記の結果について、正規版しか買わない人の割合が半数以下であることを以て、海賊版に対する態度が中国は日本より緩いという感想を抱く人はいるかもしれません。
しかしながら、中国は日本と環境が異なることを考慮する必要があります。
中国にいる日本人で、違法DVDやゲームを買い込む人は山ほどいます。
日本人は中国人に比べて、人の性において清いので海賊版に手を出したりしないというわけでは決してありません。
海賊版を容易に買えるような環境に置いたら上記の調査は日本人も中国人も大差ない結果が出るように私は思います。

○DIYについて
海賊版と似たような言葉に「DIY」というものがあります。
Do It Youselfの略で、日本では「日曜大工」とほぼ同じ意味で使われているのではないでしょうか。
中国のボードゲーム業界では、「ボードゲームの手作り」という意味で使われ、大まかに次のように分けられます。

1.自分でルールを考えてゲームを作る。
2.既存のゲームのコンポーネントを自作し、私的に遊ぶ。
3.既存のゲームのコンポーネントを自作し、売る。

1は余裕でセーフ、3はアウトというのは大半の人が同意するところかと思いますが、2は意見が分かれるところではないでしょうか。
DICE編集長の瞬間思路氏はポッドキャスト番組「Meeplayer」の中で、「DIYはセーフだけど売るのはアウト」という立場を表明しており、2は構わないという考えのようです。
日本のネット界隈では手厳しい意見を見かけることが多いように思います。

○中国のボードゲーム出版社
中国でボードゲームを出版している会社についてざっと紹介しておきます。
全て輸入ゲームの小売りもやっているので、中国在住の方で、海賊版をつかまされたくない方は指針にしていただけたらと思います。

艾賜魔袋(Asmodee)
フランスに拠点を置くAsmodeeの中国法人です。
上海に実店舗があり、ゲームを買うほか、ゲームを持ち込んだり、店に据え置きのゲームを借りたりして、プレイスペースとして使うこともできます。
『ディクシット』『十二季節の魔法使い』『コンセプト』『宝石の煌き』などの中国語版を出版しています。

MYBG
広州に拠点を置いています。
『ロビンソン・クルーソー』『宗師』『CO2』などの中国語版を出版しています。
中国語化したゲームのラインナップを見ると、ニッチなところを攻めており、コアゲーマー向けという気がしています。

一刻館
北京の会社です。
『エボリューション』『ヴィティカルチャー』といったゲームの中国化をしています。
面白いところでは、韓国の出版社Deinkoと提携して『Spice Merchant』『DoReMi』というゲームの中国語版を出しています。
また、ドイツのボードゲーム雑誌Spiel Boxの中国語版を、中国・台湾・香港で独占的に出しているのもここです。

遊卡桌遊
北京に本拠地を置いています。
言わずと知れた『三国殺』シリーズの会社です。
かつてはイタリアのデザイナーと提携して出版した『回転寿司』や、カワサキファクトリーの『ルールの達人』のリメイクなど、ボードゲームらしいゲームも出していましたが、今となっては9割方三国殺に専念という感じです。

遊人碼頭
上海に拠点があります。
『アンドロイド:ネットランナー』シリーズや『ゲーム・オブ・スローンズ』などRPG色の強いゲームの中国語版を出すという印象がありましたが、最近は『トレインズ』『キーフラワー』なども中国語化しています。

小雪的客庁
南京の出版社です。
現在のところ、独自で出版しているのは、台湾デザイナーの「羊叔」ことJason Lin氏と提携した『Black Sheep and White Sheep(黒羊白羊)』くらいですが、今後もミニマルなゲームを中心に出していくとのことです。
台湾とのつながりが深く、Taiwan Boardgame Designのゲームは、大陸地区では主にここを通して販売されています。
ゲームマーケット2014秋に「天空樹」の名義で出展しています。

なお、この他に台湾のスワンパナシアのゲームが各小売店を通して流通しています。
また、香港の戦棋会はタオバオに店舗があります

○今後の課題
中国ボードゲーム会における今後の課題は、いかにして継続的にオリジナルのゲームを作りだすかでしょう。
後に『裏切りの工作員』として日本でリメイクされた『風声』のように、国際的な場に出しても評価されうるゲームはありますが、継続的なゲームデザインを行える会社がないように思います。
国土の広さゆえに、定期的な展示会を行いづらいことや、デザイナー同士で交流しにくいことが原因だと私は考えております。
Khan Konのような大き目のゲーム会や、小雪的客庁を運営するSchwein Gamesが去年よりスタートした施魏因冬季聚会のような機会を使って、デザイナー同士の交流が深まることを願っております。


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