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2015年5月11日 (月)

【書評】茶の世界史

最近、中国茶の勉強をしておりますので、読んでみました。
中国や日本のお茶が欧米に受容されていく過程と共に、「当初は『文化』の側面が注目されていたお茶が次第に『商品』として扱われるようになっていった」という筆者の主張が述べられています。

何か異文化的なものが受容されていく過程とは面白いものです。
和田光弘さんの『タバコが語る世界史』によれば、タバコがヨーロッパに伝播した当初は薬効が信じられていたそうです。
本書でお茶が商品化していく過程が描かれているように、タバコも現在では単なる嗜好品でしかないので、あらゆるものが受容される過程でその商品性が強調されていくのはある種の性なのかもしれません。

まず文化が受容され、それがポピュラーになるにつれて商品として扱われるようになる、というパターンに普遍性があるのだとすれば、これはビジネスチャンスのヒントであると同時に、やや寂しくもあります。
寂しい、というのは、ある文化をポピュラーにしようとすれば、それを商品化する過程でその精神を犠牲にせざるを得ず、逆にその大元にある精神を守ろうとすれば、マイナーなままにとどめ置くしかないといえるからです。

現在日本政府が推進している「クールジャパン」というのも、アニメという文化を表に立てて受容してもらい、ゆくゆくは商品としてお金を稼げるようにしようということなのだと思います。
商品化した先に何があるのか、現時点ではよくわかりません。
国内においてアニメは消費対象としてもう充分に商品化されていることを考えれば、海外で商品として受容されたからといって何が問題になるのかと言えるのかもしれません。
しかしながら、クールジャパン政策に反対する当事者にはゆずれない「精神」のようなものがあるのでしょう。

ところで、本書の筆者は、「近代主義・物質主義のゆきづまりから、人びとは再び茶の『心』に関心を向けはじめた。茶の世界史は新しい段階に入ったことは確かであろう」と述べています。
本書が出版されたのは1980年なので、これからもう30年も経っています。
しかしながら、少なくとも日本においてはお茶はまだまだ商品でしかないように思います。
競争が激化する飲料業界で、ダイエット効果など実用性をアピールすることでなんとか生き残ろうとしているように見えます。
抹茶スイーツのようなものは開発されても、千利休の精神を今こそ見直そうみたいな話はてんで聞きません。
せめて私は、中国茶が終わったら次は日本茶かなと思っております。

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