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2017年8月 6日 (日)

【書評】『外来種は本当に悪者か?』

グローバル化の進展による弊害のひとつとして、外来種の侵入というものが挙げられる。
人間同士の世界的な交流が増えると、動物や植物の移動も頻繁になり、結果としてある地域に本来はいないはずの種が定着するということが起こるのだ。
日本にはブルーギルやアライグマなどの外来種が入ってきているし、一方で日本産のイタドリやワカメなんかは海外で猛威を振るっている。

しかし、それは本当に悪いことなのか。
本書は次のように主張する。
外来種によって生態系が破壊されるというが、そもそも生態系とは常に一定ではなく、たとえ人間の手が介在しなくても常に流動的なものだ。
「本来の自然」というものを想定することは果たして本当にできるのか。
また、外来種が生態系を破壊したのではなく、環境破壊によって生態系が崩れたところに外来種が入り込み、自然の再生に寄与したという例も多い。
生物多様性という観点からは、外来種はむしろ歓迎されるべきである。

変化イコール損害だとか、外来種は悪、在来種は善だとか決めつけてはいけない。自然はたえず変化し、適応している。気候が変わってきたり、人間の活動のあおりを食ったり、あるいは自然界で新たな事態が発生したりすれば、生き物が別の環境を求めて移動するのは当然なのだ。(299-300ページ)

筆者は、以上のような主張を、特に序盤ではしつこいくらいの実例を挙げながら述べている。
もちろん、外来種によって実害が出ているのであれば何らかの対策を取るべきというのは筆者も否定しないが、それはあくまでも人間のためであり、手つかずの自然を取り戻すといった理由でやるべきではないという。

確かに、外来種の問題はセンセーショナルに取り上げられがちだ。
現在はヒアリの問題が進行中だが、ヒアリの危険性を巡って情報に混乱が見られたのも、外来種は危険だという思い込みが関係者の頭のどこかにあったからかもしれない。
しかし、夏の田んぼから聞こえてくるウシガエルの声や、ドブ川でのアメリカザリガニ釣りが日本的な風景として感じられるのも事実だ。
ウシガエルもアメリカザリガニも外来種なのだから、ウシガエルの鳴き声に戦慄したり、釣ったアメリカザリガニの処分を積極的に奨励してもいいはずなのだが、現状、そういう考えの人は少ないだろう。
ヒアリと、ウシガエルやアメリカザリガニの違いは、単に慣れの問題であるといえる。
この点で、筆者の意見に説得力を感じられる部分は多い。

自然は常に流動的なものだ、生物多様性が重要だ、という主張は本書中で一貫している。
本書の主たるテーマではないものの、希少種に関する次のような主張は、私が希少種保護について抱いている違和感を明らかにしてくれた。

人間は結局のところ、自分が好きだったり、自分の目的にかなったものに手を出したいし、守りたいのだ。…お気に入りの動植物は大切にしたいと思うのが人情だ。ジャイアントパンダ、スマトラサイ、カリフォルニアコンドルなど、すでに人間の保護がないと生きのびられない動物もいる。それ自体は悪いことではない。彼らが生きているということは、私たちにとって大切な意味がある。ただ、それが自然のこれからあるべき姿だと思ってはいけない。希少動物の保護は、あくまでも人間の欲求を満たすためであって、自然が求めているわけではないのだ。(305ページ)

生物多様性を第一に考える筆者の立場からすれば、希少動物の保護には意味があるが、ピュアな自然というものは存在しないのだから、それは人間のエゴに過ぎないというわけだ。

本書の問題点を挙げるとすれば、筆者の立場もまた極端であるという批判は免れ得ないだろうという点だ。
外来種が悪だという立場がひとつの極端な立場であるとするならば、生物多様性こそ善だという筆者の立場はその対極に位置する一端であるように思える。
生物多様性がなぜ必要であるのかという説明は、本書ではあまりなされていない。
実例を多く挙げて現実的な理解を促すのが本書のスタイルなので、それを求めるのは酷かもしれないが、以上の点はすっきりしないものが残った。
とはいえ、筆者の意見と豊富な実例は、生態系や外来種の問題に新たな視点をもたらしてくれるものであった。

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