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2017年12月17日 (日)

2017年の中国ボードゲーム事情を振り返る

2015年、2016年と、中国のボードゲーム事情をまとめる記事を書きました。
昨年はあまり業界の動きに注目していなかったこともあり、2016年のまとめ記事は書いていないのですが、
2017年は面白い動きが見られたので、ここにまとめておきたいと思います。

※参考
中国(大陸)のボードゲーム/テーブルゲームについて 2015
http://raytiagu0802.cocolog-nifty.com/blog/2015/03/2015-6cd2.html

2015年の中国ボードゲーム事情を振り返る
http://raytiagu0802.cocolog-nifty.com/blog/2016/02/2015-1573.html

※2018/05/15追記
中華圏のボードゲーム情報を紹介するnoteを始めました。
https://note.mu/t_mizutani/m/md56eb1f21ded

○SHADOW結成 デザイナー結集の動き
2017年春の東京ゲームマーケットにSHADOWという中国のデザイナー団体が出展しました。
SHADOWはこちらの記事にもまとめた通り、2016年に上海で結成されたボードゲームデザイナーの団体です。
中国や台湾・香港のショップ・メディアなどと連携してデザインコンテストを開催したりしており、今年11月には「Shadow Market」(リンク先は2017.12.17現在作りかけの模様)というイベントを実施しました。
中国のオリジナルゲーム創作を盛り上げるための活動を積極的に行っています。

Wp_20171125_15_49_10_pro ↑Shadow Marketはオリジナルゲームの出展を主な目的として実施された

草の根のデザイナー団体の結成というのは、中国ではこれまでに目立った動きがありませんでした。
中国は国土が広いため、日本に比べるとイベントで全国的に人を集めるのが難しく、そのためにデザイナーの連携が取りにくいという問題がありました。
このような背景を考えると、SHADOWの結成は一種のメルクマール的な出来事であると言えます。

なお、ゲームメディア「Dice」の主導で2015年に第1回が開催されたボードゲームイベント「Dice Con」は2017年で3回目を迎え、
こちらも順調に創作ボードゲーム発表の場として機能しているようです。

Wp_20170827_09_41_41_pro ↑総合的なボードゲームイベントDice Con

○外部との連携 国外への進出
SHADOWの活動やDice Conの定期開催にともない、台湾の経験あるパブリッシャーと中国のデザイナーの交流が促進されたためか、中国産ゲームの海外進出も見られるようになりました。
台湾のパブリッシャーが中国でデザインされたゲームを出版し、ゲームマーケットやエッセンシュピールなどのイベントに出展するというケースが増えています。
過去に日本のゲームマーケットで出展されたゲームを例に挙げると、

・カニカニ!(Moaideas、2016春)
・本草学(EmperorS4、2017秋)
・救出せよ!白熊!(Two Plus、2017秋)

などです。

Wp_20160507_14_58_41_pro_2 ↑上海・shane007作、『カニカニ!』
Wp_20171007_16_27_43_pro_2 ↑上海・Liu Xiao(Leo)作、『本草学』
Photo ↑成都盒中閃電・Huang Yi Ming作、『救出せよ!白熊!』。なお、盒中閃電は現在の中国では珍しく、『海洋公園』、『平遥』といったプレー時間2時間級のヘビーゲームを発表している。

また、広州・MYBGが国際ブランドとして立ち上げたGAMDOWは、SHADOWの活動で生まれたゲーム『海盗大会』(Eastfire作)を『夢想啓航』として製品化し、2017年のエッセンシュピールに持ち込んでいます。
SHADOWブランドとしては初の国際展開されたゲームとなりました。
GAMDOWは今後も中国のゲームを国際展開する意欲があるようで、ゲームマーケットに出たいという話も聞いています。

○2018年の要注目、Yoka
2017年の終盤、Yoka Gamesがゲームマーケットに出展するという興味深い動きがみられました。
Yokaといえば、『BANG!』のシステムをほとんどコピーした『三国殺』で有名です。
『三国殺』は中国内外にそれなりのファンがいる一方で、パクリゲーとの批判もかなり多いですが、
中国国内においては、ケンタッキーやマクドナルドとコラボするなど、すでに1つのIPとして確立された感があります。
2007年の発売より一世を風靡し、国内にはゲームカフェが乱立、一時はボードゲームといえば『三国殺』という一強体制を築いていました。

Wp_20140517_21_04_31_pro ↑有名な(あるいは悪名高い)三国殺

ところがバブルははじけるもので、このときはただ開けば濡れ手で粟状態で儲かったというゲームカフェにも経営努力が求められるようになり、閉店が相次いでいます。
また、人狼の流行やAsmodeeの中国法人設立、さらには米宝海豚(Surfin' Meeple China)(注)や遊人碼頭(Game Harbor)などゲーマー向けのボードゲームを中国語化するパブリッシャーの登場といった環境の変化もあります。
三国殺ブームでボードゲームという世界に興味を持った人も多いと考えられ、当時に比べればゲームの選択肢もニーズも大きく広がっています。
しばらくはほぼ『三国殺』の一本足打法だったYokaもこのような変化を背景に、近年は『三国殺』脱却の動きを見せており、
2016年ごろより『謀殺之謎』というTRPGシリーズを展開していました。
長らく中国での活動に専念してきたYokaがゲームマーケットに出展したのもこの流れの一環ととらえることができます(とはいえゲームマーケットでもやはり『三国殺』がメインだったようですが)。
現在はボードゲームコンテストを企画しており、脱・三国殺の動きは今後も加速しそうです。

これまでもYokaはオリジナルのゲームを作っていなかったわけではなく、例えばPlanplay社がデザインした『回転寿司』を出版したりしています。
その意味で、Yokaの『三国殺』脱却は、オリジナルゲーム製作への再挑戦ともいえるでしょう。

Wp_20131130_001_2 ↑かつてYokaから出版されていた『回転寿司』

考えてみれば、中国のIT業界ではかつてテンセントがパクリコンテンツを量産していましたが、
現在では立派なコンテンツメーカーとなっています。
Yokaがアナログゲーム界のテンセントとなれるのか、このままクローンゲームで一山あてただけの一発屋に終わってしまうのかはわかりません。
しかし、ここで注目したいのは、Yokaは書店やスーパーマーケットなど、中国国内において独自の販路を築き上げていることです。
Yokaがオリジナルゲームの分野でも成功を収めることができれば、そのインパクトはいち企業の経営にとどまらず、業界全体に及ぶでしょう。
2018年のキープレーヤーとして注視したいと思います。


注:なお米宝海豚の立ち上げにはAsmodee Chinaの退職者が関わっているのだそう。

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コメント

記事を拝読しました。
実は私、2012年頃に中国のボードゲーム事情に関心を持ち、いくつかの中国ゲームを買っていた事があります。
Yoka Games がゲームマーケットに来たのを機にまた関心が戻って来ました。
2018年には中国に旅行に行くついでに現地のボードゲーム事情を調べたいと思っています。
どうかよろしくお願いします。

>>双六小僧さま

コメントありがとうございます。
私も以前に双六小僧さまの記事を拝見したことがあります。
中国のゲームに関心を持っている方はあまり多くない中で、そのようなコメントをいただけると非常にうれしいです。

中国にいらっしゃるとのことですが、記事中でも触れているDice Conというイベントがおそらく今年も8月の終わりごろに北京で開催されますので、
もし可能ならそれに合わせて北京にいらっしゃると面白いかと思います。

当時の私のブログをご覧になっていただけたそうで、ありがとうございます。
ただ、色々あって当時のブログは消してしまいました。申し訳ございません。当時余りに三国殺の影響が強すぎて、食傷してしまったのが原因です。
ただ、その状況もそろそろ変わりそうな予感がしています。
その辺りの動きを知るためにも、また時々水谷様の記事を読ませていただきます。

>>双六小僧さま

確かに三国殺は、良し悪しはともかく人気は絶大でしたね。
現在は以前の三国殺のポジションが人狼に取って代われらているという印象です。

最近は頻繁に更新できていませんが、ぜひ気にかけていただけると励みになります。
ありがとうございます。

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