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2018年9月 3日 (月)

DICE CON 2018 レポート

昨年に続き、今年も北京のDICE CONへ行ってきました。
昨年のレポートはこちら

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〇はじめに
今年のDICE CONは8/24~26の3日間開催。
初日は関係者とVIPチケット購入者のみのVIPデーで、2日目と3日目に一般開放されるという例年通りの日程でした。
例年と違ったのは、開催の1週間前にチケットの販売が突然停止されるという事件が起きたことです。

Photo

私も当日券で入場する予定だったので困り果てていましたが、複数の方にご協力いただいて3日目に無事入場することができました。
お力添えいただいた方々にこの場を借りてお礼を申し上げます。

販売停止の件に関しては、政府当局から1日1000人の入場制限をかけさせられたとも、イベント自体が中止になりそうなところを主催者の努力によって開催は何とか維持したともうわさがあります。
同時期に予定されていた香港の歌手プリシラ・チャン(陳慧嫻)のコンサートは中止に追い込まれており、政治的に敏感な何かがあったのかもしれません。
プログラムの面でも縮小を迫られたようで、去年は使われていた地下階がまるまる空きスペースになっていたほか、
予定していたいくつかの企画を実施できなかったとのことです。
参加者としては物足りませんでしたが、今年に限っては開催できただけで成功だったのでしょう。

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※9/4追記
香港の業界関係者Charles Yanさんがこれに関して事情を暴露していました。

Dice Con會死於非命?
https://medium.com/@charlesykh/dice-con會死於非命-f1716f3900eb

この記事によれば、


  • 中国アフリカ協力フォーラムの開催にともなって大・中規模イベントの開催が制限された

  • 開催可能な「小規模」の基準は参加人数300人以内

  • 幸いにも当日は厳格な入場制限がなされなかった


Diceとも関係が深い方なので、情報の確度は高めだと思います。
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〇DICE CON 2018 最大の目玉 ライナー・クニツィア
そんな出鼻をくじかれた今年のDICE CONですが、最大の目玉となったのはドイツゲーム界の巨匠ライナー・クニツィア氏をゲストに迎え入れたことでしょう。

Img_20180826_130501 ↑クニツィア氏直筆サイン入り『アメン・ラー:カードゲーム』

クニツィア氏は、VIPデーに開催されたフォーラムで、パキスタン人デザイナーのNashra Balagamwala氏と、イタリア人デザイナーのRoberto Di Meglio氏の両外国人デザイナーに先立って登壇。
関係者との交流も行われ、会場にいた中国人や台湾人の関係者は、WeChatのモーメンツやTwitterに、ツーショット写真や、直筆サイン、クニツィア氏からプレゼントされたペンの写真などを次々にアップロードしていました。
うらやましい限りです。
Diceにおかれましてはぜひ今後も多くのデザイナーと良好な関係を築いていただきましたら。

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〇拡大を続けるアスモデ帝国
さて、今年のDICE CONのブース展開ですが、目立っていたのはやはり今を時めくアスモデ(Asmodee)でした。

これも

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これも

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これも

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全部アスモデのブース。
ブース面積としてはスワンパナシア(新天鵝堡、Swan Panasia)・盒中閃電と並んで最大級、さらに入口そばという立地の良さと、空間をフルに生かした展示で存在感を発揮していました。
なんでも今年は過去4回のDICE CONの中でもっとも力を入れて出展したそうで、売上成績も最高だったとのこと。

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Img_20180826_110515 ↑『宝石の煌めき』大中華地区大会の決勝も開催

なお、アスモデはすでに中国法人を設立していましたが、DICE CONの席で台湾・玩楽小子(Go Kids)の買収を発表。
アスモデ帝国の拡大が止まりません。

Img_20180826_141923 ↑Asmodeeに買収されることが発表された玩楽小子のブース

〇中国ゲームのトレンド マーダー・ミステリー・ゲーム
今年展示されていた中国産ゲームで目立っていたのは、数年前から流行り始めたマーダー・ミステリー・ゲーム(謀殺之謎)というジャンルのものです。
ミステリー系のRPGで、ヨカゲームズ(遊卡遊戯、Yoka Games)が2016年ごろより開拓し始めたジャンルです。
昨年はヨカゲームズのブースで見られるくらいでしたが、今年は複数のブースで散見されました。

Img_20180826_110849 ↑謎之推理社のブース、このジャンルのゲームを専門で作っているらしい

Img_20180826_115329 ↑夢天遊もマーダー・ミステリー専門。英語版も計画しているのだとか

Img_20180831_090536 ↑謎之推理社のブースで「このジャンルの初心者にはおすすめ」ということで購入した『王府百年』。ぼちぼち日本語に訳して体験会のようなものを開けたらと思っています

〇試遊したゲーム
●第九号交響曲(Symphony No.9)
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台湾・モアイデアス(摩埃創意工作室、Moaideas)の新作、おそらく中国大陸では初披露の『第九号交響曲』です。
タイトルは直訳すると「交響曲第9番」。
クラシック音楽の世界では、「交響曲第9番を作曲すると死ぬ」という「第九の呪い」なるジンクスがあるそうなのですが、このジンクスがゲームシステムに取り入れられています。
得点パターンが多いため、複数の勝ち筋が考えられます。
全員で一斉にお金を握りこんで音楽会開催のための賛助金を供出するフェーズが毎ラウンドあるのですが、
このフェーズではお金が集まらなかったり、逆に集まりすぎたりすると音楽会が開催されません。
音楽会が開催されないとプレーヤーの手元にもお金が入ってこないため、展開によっては所持金がジャブジャブにもカツカツにもなりそうです。

●拼分奪秒
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かわいらしいイラストが特徴的な北京・飛騰無限の新作です。
震災に遭った難民を助けるというテーマのリアルタイムパズルゲーム。
一番低い難易度でもパズルを完成させるのは難しく、ついつい何度か挑戦したくなります

●猴島(Monkey Island)
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墨魚遊戯工作室(MOYOGAMES)のアブストラクト系ゲーム。
相手がタイルを置ける場所が制限される状況をいかに作り出すかがポイントだと思います。
MOYOは今後も十二支シリーズを作っていくとのこと。

〇その他のブース
以下、その他のブースをダイジェストでお送りします。

Img_20180826_112110 ↑EmperorS4(卓遊愛楽事)は『航海の時代』グローバル版や、新作『砂之国度(Realm of Sand)』を出展

Img_20180826_112428 ↑3日目ということを踏まえてもやはり寂しいような

Img_20180826_112603 ↑日本でもおなじみビッグファン(大玩卓遊、BIGFUN.)の『四季の森』は今年のGolden Dice賞の「最優秀オリジナル華人入門ゲーム(最佳華人原創入門遊戯)」賞を受賞。全受賞作品はこちら

Img_20180826_112753 ↑『ドラスレ』や『東京サイドキック』など、よく日本のゲームの中国版を出版している卓遊居

Img_20180826_113030 ↑食品ブランド「艾格喫飽了」との異業種コラボスナック

Img_20180826_113207_2 ↑成都・盒中閃電のインパクトあるバナー。「我愛卓遊(ボードゲーム大好き)」の周りに書かれているのはすべてボードゲームの中国語タイトルだ。「小小世界」、「電力公司」あたりはわかりやすいかも

Img_20180826_113113 ↑現在の中国では珍しい、ミドル~ヘビー級のゲームを作っている盒中閃電だが、今回は子ども向けを中心に出展

Img_20180826_123528_2 ↑これも盒中閃電。『敦煌』で「最優秀華人オリジナルゲーム(最佳華人原創遊戯)」賞を獲得

Img_20180826_130237 ↑アスモデブースの隣で目立っていた電子ゲームパブリッシャー・Recreate Games。DICE CONでは毎年数社の電子ゲームメーカーが出展しているのだ

Img_20180826_115705 ↑中国の小規模パブリッシャーが集められたエリア。やはり寂しいか

Img_20180826_130118 ↑「ファイナルファンタジー」のTCGの中国版

Img_20180826_120018 ↑スワンパナシア

Img_20180826_141817 ↑最近アジアのイベントでよく見るようになった香港・栢龍玩具(Broadway Games)。いつの間にかマスコットが

Img_20180826_144948 ↑栢龍玩具ブースでオセロの世界チャンプが多面打ちを披露。栢龍玩具が開催するオセロ大会のプロモーションだそう

Img_20180826_151302 ↑こちらも恒例の寄せ書き

〇おわりに
チケット販売停止を余儀なくされるという危機があった今年のDICE CONですが、4年連続で開催できたことに大きな意味があるのだろうと思います。
とはいえ今年は北京特有の政治的リスクを露呈してしまったと思われ、今後も北京で続けていくのか、それとも上海など他の大都市で開催していくのか、来年以降の動きが注目されます。
第1回のDICE CONが始まったときと比べ、中国のボードゲーム業界は外部との交流がずいぶん増えたと感じています。
そのような状況を作り出すうえでDICE CONが果たした役割は小さくないでしょう。
今後も定期開催を続け、電子ゲーム業界のChina Joyのようなイベントになってくれたらと思います。


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